『配偶者居住権』の評価について【第1回】
1 はじめに


相続法の改正(令和2年4月1日)により、相続人が亡くなった際に、相続人が所有していた建物に居住していた配偶者が居住できることを保護する制度『配偶者居住権』が創設されています。
(別記事『配偶者居住権』(概略)についてもご参照下さい。)
今回は、遺産分割協議における『配偶者居住権』(民法1028条~1036条)(長期)の評価方法についてご紹介をしたいと思います(今後、具体例に則した計算方法もご紹介させていただく予定です。)。
2 『配偶者居住権』の評価について
⑴ まず、なぜ『配偶者居住権』が重要になるのかについてです。
それは、居住建物の所有権を奥さんなどの配偶者が取得する場合よりも、『配偶者居住権』だけを奥さんが取得することで、居住用建物の所有権を取得する場合よりも遺産分割上で低額に評価されることになり、残された奥さんに預貯金などの他の遺産も取得しやすくなるというメリットが生じるからです。
そのため、『配偶者居住権』の評価が重要になるのです。
⑵ 現在、実務上で確定的に確立した唯一の評価方法はないようです。
片岡武編著『第4版 家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』(日本加除出版株式会社)(以下「家裁の実務」といいます。)では、以下の2つの評価方法が紹介されています(383-393頁参照)。
<① 還元方式>
配偶者が無償で居住用建物に居住することができることに着目し、配偶者が得る経済的利益の価値の総和を求める方式になります。
● 配偶者居住権の価額=(正常賃料相当額-必要費)×年金現価率(期間・利率)
本来払うべき賃料から必要費を控除した金額に、平均余命までの期間をもとに利率を考慮して配偶者が受ける経済的利益を導き出します。
<② 簡易な評価方法>
「居住建物及びその敷地の価額から配偶者居住権の負担付きの各所有権の価額を引いた額とする方法」になります(「家裁の実務」384-387頁)。
● 配偶者居住権の価額=❶建物敷地の現在価値-❷配偶者居住権付所有権の価額(負担付建物所有権+負担付土地所有権等)で導き出します。
このうち、❶ 建物敷地の現在価値:「固定資産税評価額」、「時価評価」または不動産鑑定によって価値を決めることになります。
また、❷ 配偶者居住権付所有権の価額(負担付建物所有権+負担付土地所有権等)については、
「負担付建物所有権」=固定資産税評価額×{法定耐用年数-(経過年数+存続年数)}/(法定耐用年数-経過年数)×ライプニッツ係数
と
「負担付土地所有権等の価額」=敷地の固定資産税評価額または時価×ライプニッツ係数
を足して導き出します。
3 さいごに
以上、配偶者の居住を保護する『配偶者居住権』の評価方法の概略についてご紹介をさせていただきました。
また別の記事にて具体的な計算方法についてご紹介をさせていただきます。
『配偶者居住権』については、残された配偶者の建物の居住権を保護する制度ですが、一見簡単そうな制度でもその評価方法について専門的な知識が必要となります。
そこで、こうした制度の有効活用のためにも、相続を取り扱う弁護士へご相談をされることをオススメいたします。
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