相続財産清算人選任と相続放棄後の「相続の承認」について

文責:弁護士 岡﨑 伸哉

作成日:2023年08月30日

1 はじめに

 相続放棄を行なうと、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。

 相続放棄すれば相続人ではなくなり、被相続人の資産も取得できませんが、負債を相続せずに済みます。

 では、相続放棄後に、相続財産の預貯金から下ろして費消した場合、どうなるのでしょうか。

2 単純承認(相続の承認)について

 「相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。」は、相続人は、単純承認(相続の承認)をしたものとみなされます(民法921条3号)。

 

 相続放棄の手続きを行った後であっても、相続財産を意図的に隠したり、遺産の預金口座から出金して費消した場合では、単純承認したものとみなされ、相続放棄が否定されることになります(相続財産の目録記載は、限定承認に関わってきます。)。

 こうした行為は、「限定承認・相続放棄後の背信的行為」とされます。

3 「限定承認・相続放棄後の背信的行為」(隠匿)について

 「限定承認・相続放棄後の背信的行為」のうち、相続財産の「隠匿」は、相続財産の全部又は一部について、その所在を不明にすることです。

 「隠匿」にあたっては、財産を隠す相続人が、財産を隠すことによって、被相続人の債権者等に損害を与える可能性があることを認識している必要があります。

 また、財産価値の極めて低い財産を隠した場合まで、相続財産の「隠匿」にはあたらないとされています。

4 「限定承認・相続放棄後の背信的行為」(私に消費)について

 「限定承認・相続放棄後の背信的行為」のうち、相続財産を「私に消費」するとはどういった意味なのでしょうか。

 相続財産を「私に消費」するとは、ほしいままに相続財産を処分して原形の価値を失わせることをいいます。

 代表的な例としては、被相続人の預貯金を引き出して費消することです。また、被相続人の不動産を処分することも該当します。

 ただし、消費をしたことに正当な理由があれば、「私に消費」することにはなりません。

 正当な理由について、もう少し詳しくいうと、財産を保存するため、その他の事情により、正当な理由があれば、財産を使っても「私に消費」したことにはなりません。

5 相続財産清算人選任後に、「相続の承認」をしていたことが判明した場合

 『相続財産清算人』を選任された場合、「相続の承認」については相続放棄の前後にかかわらず同じ扱いとなります。

 たとえば、相続放棄後に預貯金を下ろした法定相続人の方が、「相続の承認」をしたとして相続人になり、被相続人の負債を負うことになります。

 また『相続財産清算人』は、相続財産管理人選任処分の取消しの申立を行い、同取消しの審判を受けることになります。

6 さいごに

 相続放棄の申述についていくつか注意していただきたい事項があります。

 少しでも気になる場合には、相続放棄の申述にも詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

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