『デジタル遺言』(保管証書遺言)の創設について
1 はじめに


政府は、遺言の利用を促進するため、民法の改正を行ないました(改正民法が令和8年6月17日の参院本会議で可決し、成立しました。)。
パソコンやスマートフォンを用いて作成した「デジタル遺言」を法務局で保管する制度を新たに創設することになったのです(保管証書遺言)。
デジタル化により「遺言書」作成の利便性向上を図ることが目的で、法律の公布から3年以内の施行を目指すことになっています。
そこで、今回は、法務局の「法制審議会第204回会議(令和8年2月12日開催)」をもとに今現在わかっている、「デジタル遺言」(保管証書遺言)の創設についてご紹介したいと思います。
2 デジタル遺言(保管証書遺言)について
※ 参考:民法(遺言関係)等の改正に関する要綱案
<「デジタル遺言(保管証書遺言)」概略>
① パソコンやスマートフォンを利用し、デジタルデータでの遺言書を作成します。
② 法務局に申請(オンライン・郵送)をします。
③ 法務局の遺言書保管官と遺言者本人が「対面方式」または「法務局を訪問しなくてもよいウェブ会議方式」で面談をし、遺言者本人に遺言の全文を読み上げてもらい、本当に遺言をする意思があるのかを確認することになります。
※ 作成に「押印」は不要です。
※ デジタル遺言(保管証書遺言)については、法務局に保管されることで有効となるものです。自分でパソコンやスマートフォンで作成したデジタルデータの遺言はそのままでは有効とはなりませんのでその点は注意が必要です。
※ 保管費用は現時点では未定です。
※ 死亡後、遺言者本人があらかじめ指定した人に遺言書の存在を通知することになります。
なお、従来の「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」も制度として維持されます。
ただし、「自筆証書遺言」は本人が遺言書全文と日付、名前を手書きする要件は変わりません。しかしながら、押印の要件は廃止されます。
3 「デジタル遺言書」作成の際のオンライン手続に対する懸念
⑴ 『遺言書』の作成には、第三者の意思の介入のおそれが生じてきます。
オンライン方式では、「遺言書」の作成で利益を受ける家族等が「遺言書」の文面を作成し、オンライン面談時にも遺言者の横で不当な介入を行うおそれがありえます。
そこで、不当な介入、影響の疑いがあると疑われる場合にはオンラインではなく法務局への出頭を求められることができることを制度上設けられる予定です。
⑵ 『遺言書』作成時に、遺言者の遺言能力があるのかどうかについて懸念が生じます。
特にオンラインでの作成手続きの場合、「遺言者」に遺言をする能力(遺言能力)があるかどうかについて対面よりも疑義が残ることも考えられます。
ただし、以上の⑴⑵の懸念は、「自筆証書遺言」の作成の際にも同様に生じうる問題です。
「デジタル遺言(保管証書遺言)」の制度を利用するからといって、上記の⑴⑵の問題が解決されるわけではなく、「自筆証書遺言」の作成と同様の懸念が生じるということになります。
この点は、「公正証書遺言」とは違いが生じるといえます。
4 さいごに
『遺言書』の作成は大げさに考えるのでなく、気軽に作成をしましょう。
上記のように、遺言についても新たな「デジタル遺言(保管証書遺言)」が創設され、近い将来運用が始まります。
国も『遺言書』の利用を進めるため、法律の改正を都度おこなってきています。
『遺言書』があることで、将来の“争続”を防ぐことにもつながります。
『遺言書』は後で考えが変わったら書き直すこともできます。
是非思い立ったらまずは『遺言書』の作成をご検討ください。
少しでも『遺言書』の作成にご興味がありましたら、『遺言書』の作成・相続案件にも慣れた弁護士にお気軽にご相談をされることをオススメいたします。
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