遺言書に記載されている『寄与分』について
1 はじめに


仕事で様々な遺言書をみていますと、遺言の「付言事項」(その内容自体に法的効力がない事項)で「法定相続人Aが私について長年面倒をみてくれた寄与に感謝し、本遺言を遺すことにしました。」等の記載をみることがあります。
また、たとえば遺言の本文(遺言事項)に「長女Aには寄与分として遺産の5分の4を相続させる。残りの5分の1を長男B、次男Cに相続させる。」という遺言もみかけることがあります。
こうした遺言書に記載された、遺言者による寄与分の記載は、効力があるのでしょうか。
『寄与分』(民法第904条の2)が認められるかどうかが問題となります。
※ 相続で問題となる『寄与分』についてもご参照ください。
2 「遺言事項」とは
「遺言事項」とは、遺言に記載することで効力を有するものになります。
具体的には、以下の⑴⑵が「遺言事項」となります。
⑴ 遺言事項の法定
① 身分事項に関する事項(遺言認知、未成年後見人の指定など)
② 相続の法定原則の修正(推定相続人の廃除、相続分の指定、分割方法の指定など)
③ 遺産の処分に関する事項(遺贈(配偶者居住権の設定等)など)
④ 遺言の執行に関する事項(遺言執行者の指定など)
⑵ 民法に遺言による旨の定めはないが、遺言によってできると解釈されている事項
祭祀承継者の指定、特別受益の持ち戻し免除、信託の設定、生命保険金受取人の指定・変更など
(以上⑴⑵は 片岡武編著「第4版 家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務」日本加除出版株式会社 487、488頁より引用)
3 『寄与分』にふれている遺言の効果
⑴ 上記2で述べました「遺言事項」以外のことを遺言に記載しても法律上の効果は生じません。
⑵ ただ、調停や裁判の中では、遺言にある「遺言事項」以外の記載を根拠に相手方が主張をしてくることはよくあります。
こうした「遺言事項」以外の記載は、裁判上の一つの証拠にはなりえます。その記載により、遺言当時の遺言者の意思を推認する資料にはなりえるからです。
⑶ 遺言書に記載された、遺言者による寄与分の記載は、「遺言事項」自体ではありませんので、法的な効力自体は生じません。
他方で、最高裁昭和58年3月18日第二小法廷判決では、遺言の解釈について以下のように述べられています。
「遺言の解釈にあたつては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたつても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。」
つまり、できるだけ遺言者の真意を尊重し、遺言者の状況を考慮しながら、遺言を解釈すべきなのですから、遺言の中に寄与分に関連した記載がある場合、寄与分を考慮した「相続分の指定」として有効な効力を有するといえます。
また「相続分の指定」として判断できない記載であっても、遺言者の遺言を遺した当時の意思を推認する資料として活用し、寄与分を肯定する考慮要素とはなりえるといえます。
4 さいごに
今回は『寄与分』に関連し、実務上、遺言の中でよくみる記載を踏まえて紹介させていただきました。
必要以上に自分のために面倒をみてくれた、事業への貢献をしてくれた子のために「遺言書」を作成しておくことも重要です。
『寄与分』をご主張したい方もいらっしゃると思います。
そうした場合、相続に詳しい弁護士にご相談をされることをオススメいたします。
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