「遺言執行者」の義務について
1 はじめに


「遺言」の中に「遺言執行者」を指定するメリットについて以前ご紹介【「遺言執行者」を遺言で指定するメリットについて】をさせていただきました。
「遺言執行者はどうやって業務をおこなえばいいのか」、「遺言執行者が適切に業務をおこなってくれない」とのご相談を受けることもあります。
「遺言執行者」にはご相続人が指定されることもありますが、現実問題として適正に業務が行なわれていないケースを業務上でみかけることがあります。
専門職でない一般の方が「遺言執行者」に就任すると、法的な手続きをどのように進めていいのか皆様ご不明な点であることが理由としてあると思います。
そこで、今回は「遺言執行者の義務」についてご紹介をさせていただきます。
2 「遺言執行者」とは?
相続が発生し、遺言の内容を実現させることになりますが、遺言者に代わって遺言を実行する人が必要となります。
そこで、遺言の内容を実現する人を、生前に遺言で指定をしておきます。
「遺言執行者」は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有しており、遺言者の想いを叶えてくれる存在です(民法1012条1項)。
3 「遺言執行者」の義務にはどのようなものがあるか
遺言執行者の義務としては、以下のものが挙げられます。
❶ 任務の開始義務(民法1007条)
「遺言執行者」は、就任をしたら直ちにその任務を開始しなければなりません。
❷ 相続財産目録の作成、交付義務(民法1011条)
「遺言執行者」は、「遅滞なく」相続財産目録を相続人に交付しなければなりません。
また、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければなりません。
※ 遺言によって相続財産を取得しない相続人(遺留分侵害額請求権を有しない相続人も含みます。)に対しても相続財産目録を交付する義務があることには注意をしてください。
❸ 遺言執行に必要な一切の行為を行なう義務(民法1012条1項)
「遺言執行者」は、善良なる管理者としての注意義務をもって、任務を遂行することになります。
「遺言執行者」は、相続人から請求があったときは、いつでも遺言執行の状況等について報告する義務があります。
※ 遺言によって相続財産を取得しない相続人に対しても報告義務はあります。
❻ 受領物等の引き渡し義務(民法1012条3項、同646条)
「遺言執行者」は、遺言執行の任務上、関係者から受領した金銭その他の物や果実、権利を相続人に引き渡し・移転をしなければなりません。
「遺言執行者」は、相続人のために受領した金銭を消費した場合には、その消費した日以降の利息を支払う義務があります(遺言執行に関する費用は除きます。)。
4 さいごに
「遺言執行者」につきましては、自分の意向に沿う遺言の内容を実現するために必要性が高いといえます。
ただし「遺言執行者」といっても一般の方には、「どのように業務をおこなうのか」、「どういった義務があるのか」についてあまり浸透はしていないと思います。
専門家を「遺言執行者」に指定しておくことで、法的な知識のもと、適正に手続きを進めていくことが期待できます。
「遺言書の作成」とともに、「遺言執行者を指定するか」、「遺言執行者を誰に指定するかについて」、弁護士に事前にご相談をされることをおすすめいたします。